第337回『ギリシア人の物語 Ⅲ 新しき力』塩野七生 前のページへ戻る

昨年の暮に発売されたシリーズ『ギリシア人の物語』の最終巻。
そして、著者最後の歴史長編(と本人が宣言している)です。
総ページ数460ページ、定価3200円(税別)。
どうしよう、文庫本が出るまで待とうか。
ずっと迷っていましたがとうとう我慢しきれず買ってしまいました。

 

第337回『ギリシア人の物語 Ⅲ 新しき力』塩野七生



文章が大変読みやすく、登場人物たちも既に旧知の人ばかりなので、
1週間ほどで一気に読破してしまいました。
父王フィリッポス、老将パルメニオン、近衛騎兵隊長クレイトス、
恩師アリストテレス、そして愛馬ブケファロス…
おもしろかったです。
アレクサンドロス。ますます好きになってしまいました。

 

アレクサンドロスがこの空前絶後の大遠征に成功したのはどうしてでしょう。
若さ。スピード。決断力。用意周到さ。寛容な心。不動の意志。
先王の業績。有能な家臣団。優秀な仲間。優秀な馬。強運。

あらゆる戦闘で常に先頭に立って戦い、
ダイヤの切っ先となって敵陣に切り込み、勝利をものにしました。

 

対するペルシャ王ダリウスは、
若くはない。(イッソスの会戦時47歳、対するアレクサンドロスは23歳)
(文中、塩野先生は人称代名詞がわりに「二十三歳は」などと使っています。)
(これはアレクサンドロスの若さを強調するとともに、彼をすごく身近に感じられます)
遅い(対応が遅い、決断が遅い、行動が遅い)。
迷う。逃げ出す(これは早い)(^_^;)。

 

小説やマンガ、ゲームなどでは国王自ら軍隊の先頭に立って敵陣に切り込む、
などという場面が良く描かれますが、実際問題として相当問題がある行為でしょう。
後世の名将たちもカエサルにしろスキピオ、ハンニバルにしろ、
戦略戦術はマネしても、あれだけはマネできないだろうと著者は言います。
アレクサンドロスの部下たちも危険だから止めてくれ、と
泣いて頼んだということですが聞き入れられなかったようです。
勝利に対する強い衝動が彼を突き動かしたのでしょうか。
即断速攻は戦闘時間の短縮になるし、兵の損耗も少なくて済むというものです。

 

著者お得意の政治形態への言及もあります。
ギリシャの都市国家アテネは民主政(デモクラツィア)の形態で発展してきました。
しかし、ペルシャ戦役、ペロポネソス戦役などにより疲弊し、凋落して行きました。
アレクサンドロスのマケドニアは王政です。ダリウスのペルシャも。
現代の我々はデモクラシーがよりベターな形態だと思っています。
しかし、著者の塩野七生曰く、

 

   ―より多くの頭脳を結集すればより良い政治が行えると思うほど、デモクラシーは単純ではない。―

 

意思決定に時間がかかる。衆愚政治に陥りやすい。ポピュリズムに走りやすい。
これが王政ならば、意思決定は速いでしょう。
賢明で慈悲深く、的確な判断を下し実行できる統治者がいたなら、これほど良いものはないでしょう。

 

これまでに読んだアレクサンドロス関連本をまた読み返したくなりました。

 

第337回『ギリシア人の物語 Ⅲ 新しき力』塩野七生

満寿夫でした。

 


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